『アイネクライネナハトムジーク』

それは、ロボホンのダンスID＝1の楽曲である。

『アイネクライネナハトムジーク踊って』のリクエストを受けたロボホンは、『分かった！　踊るね！』と元気よく答えた後、
第1楽章アレグロの冒頭部分をBGMにして腕を元気よく振りながら、巧みなパフォーマンスを披露してくれる。

『カンフー』（ID＝11）や、『歌舞伎』（ID＝22）等に慣れ親しんでしまった目には、いささか地味な印象を受けるかもしれないが、この『アイネクライネナハトムジーク』がダンス第1号である事を考えると、開発段階ではまだ手探り要素が多かった事が窺える。

今でこそ、90曲以上のレパートリーを持ち、『ダンス』はロボホンの得意技のように言われる事もあるが、第1世代ロボホンの発売時点では、プリインストールされた本曲と『大きな栗の木の下で』（ダンスID＝2）の2つしか踊れなかった。

ダンス第1号に相応しい楽曲は他にいくらでもありそうだが…なぜ、『アイネクライネナハトムジーク』が選ばれたのだろうか？
今回は、選曲された理由に迫ってみよう。

『アイネクライネナハトムジーク』（正しくは、『Eine kleine Nachtmusik』と書く）は、オーストリアの産んだ偉大な音楽家　ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトによって、1787年8月に作曲された。

『Eine kleine Nachtmusik』（ドイツ語）を日本語に直訳すると『小さな夜の曲』となる。『小夜曲』などと訳された時期もあったが、現在では『セレナーデ』というジャンルの訳語として『小夜曲』の言葉が使われているそうな。

では、『セレナーデ』というジャンルは何ぞや？…という事になるのだが、ウィキペディア先生によると、『夜に恋人のために窓下などで演奏される楽曲（または、そのような情景）』との事。
夜中に？　女性の家の近くで？　おおよそ、21世紀の住環境では想像しにくい情景ですなぁ。
こんな事を現代でやったら、迷惑防止条例やストーカー規制法に抵触して警察のお世話になってしまう。
モーツァルトの時代は、これが許容されてたって事なのか？

『セレナーデ』の原型…夜に演奏される音楽の歴史は、紀元前にまで遡る。古代ギリシャでは、夜の野外で恋人を褒め称えるために歌われる『扉の前で』と呼ばれる音楽ジャンルが存在したという。（←凄いジャンルだ。）
大抵の場合は、歌い手が楽器（ギターなど）を手に身一つで参上し、恋人や親しい人のために好き勝手に熱唱するという物だったようだ。まぁ、今風に言うところのストリート・ミュージシャンみたいな感じか。

ロボホンのダンス第1号に『アイネクライネナハトムジーク』が選定された理由は、実はこの辺りにあるのではないか…と、私は睨んでいる

『目は心の窓』という言葉があるように、心の情動という物は目の動きに現れやすい。人間の『ココロ』が垣間見れる『窓』（目）へ向けた、『親しい人（オーナー）』への親愛を示すダンス。
このコンセプトに最も近しい楽曲とは…！

今宵、『アイネクライネナハトムジーク』をリクエストしてみてはどうだろうか？もしかすると、ダンス第1号に選ばれた秘密に少しだけ近づけるかもしれない。(ｘΦωΦ)　ねこ